読物の部屋その8〜5
★読書録(21)★      ーーーー4月8日 徳淵 誠 記

今年西暦2000年の初読みは「運は天にあり(わたしの履歴書)」日本経済新聞社刊
(¥1500+税)。
正月3ケ日のあとすぐ表紙裏に徳渕誠様恵存 土屋義彦と朱印2 ケ付きで墨書された本が送られてきた。著者の埼玉県知事土屋さんとのツ−ショット写 真付きで。今年は選挙の年だからミエミエと言われればそれまでだが、読んだらとても 面白かった。大正製薬ファミリ−出身なので順風満帆で知事になったんだろうと思って いたが、意外にもいろいろ苦労されて参議院議長のあと埼玉県知事になられ、「ダサイ タマ」とは言わせないぞとの意気込みで県政に取り組んでおられることがよく分かった 。県民の一人として早速お礼の手配をした。

自伝評伝伝記本はこれまでいくつか紹介したことがある。読書の楽しみを与えてくれる 有力なジャンルの一つである。バ−トランド ラッセルの評伝は買ったがまだ読んでい ない本のリストに入っているが、サイバネティクスの提唱者ノバ−ト ウィナ−の数冊 の自伝、江藤淳著「夏目漱石とその時代」(新潮選書5冊本)「夏目漱石」(勁草書房 ¥800、これはむしろ作家論か)はときどき読み返している。それぞれに自慢話と思 われる記述は勿論あるが、それにもまして書いた人書かれた人の魅力がよく分かる。司 馬さんの「竜馬が行く」は伝記本だろうし、結城昌治著「志ん生一代」(朝日新聞社刊 、上巻¥840 下巻¥920)もすぐれた評伝である。

つけたりとしては長くなるが、今年初読みの本が恵送されてきた経緯などを書く。 青山本社勤務時代、行きつけの地元スナック仲間の和光市市議 岡田さんが黒塗りの公 用車で来社され、和光市国民健康保険運営協議会(以下運協)委員になって下さいと田 中和光市市長の委嘱状を差し出した。彼の説明を聴いて「これは私企業社員の社会的貢 献の一つになるナ」と思い、独断で「お受けします」と答えた。しばらくするとその運 協の会議通知が来た。市役所会議室に行くと、市議、お医者さんなど15名くらいの方 々がいて、議長として和光市商工会会長(元県議)の斎藤さんがいた。会議が始まる前 に市長から辞令をいただいた。「特別職非常勤地方公務員運協委員を命ず」。議題は市 長から諮問されて和光市国保のその年の予算を市長に答申することであった。市役所事 務局から原案が出ていて、それを被保険者、医者、中立(有識者?)代表3者の委員で 議論して答申を作成した。国民皆保険といわれる健康保険制度は大きく分けて国民の1 /3ずつの被保険者を有する3ツの健保組織で構成されている。大企業などの組合健保 (含公務員の共済組合健保)、中小企業の政府管掌健保、自営業者その他前の2ツの組 織に入っていない地域住民の国保。国の指導のもとにそれぞれ独立に運営されている。 組合健保では保険料にさらに同額を雇用者つまり会社が積み増しており、家族を含めて もあまり医者にかからない。国保では保険料と同額の上乗せがない上に医者にかかる人 が多いから国から医者に払う費用の50%の補助金が出ていても、やはり赤字となる。 赤字の分は市町村民税から補填される。この補填額は運協の重要な答申項目である。市 民税を収めている人達の多くは国保に加入してないので、なぜ市民税で国保の赤字を埋 めるのか?の疑問が当然予想される訳で、妥当な額を決めることは国保運営の重要な課 題である。運協から答申された国保予算は市の予算に組み込まれ市議会にかけられて決 定される。和光市では一回もないが、運協答申が議会で否決修正されることもあるらし い。赤字補填のため保険料を値上げすることは共産党の委員が弱者にしわよせするなと 叫ぶから仲々むずかしい。他に保険料(税)を納めない人が沢山いること(和光市では 12%)も問題である。国民皆保険だから保険証は自動送付される。保険料(税)を納 めてない人の保険証には「未納」の大きな赤いハンコを押したらどうかと事務局の人に は言っている。今年度からは未納者には保険証の代わりに資格証が交代される。病院に 行くと全額払わされ、その領収書と資格証を市役所に持っていくと個人負担分を除いた 額が返してもらえる。当然、未納保険料が差し引かれる。ごちゃごちゃに書いてしまっ たが、国保の現状がごちゃごちゃなのである。4月からはごちゃごちゃごちゃごちゃに なる。介護保険が導入されるから。

2年前に会長が引退して副会長から互選で会長に昇進した。会長職は県の運協の会員と なる。県の運協会議に出ていくと、受付でどなたのお付きの方ですかときかれた。私は 和光市から来た会長ですとムッとしながらも静かに答えた。事務局のあわて様は見てい て面白かった。和光市事務局から和光市は今までサボッていたから今度は県運協理事に 指名されますと言われていたので、会議冒頭指名された後、新理事挨拶で私のごとき若 輩者が...と言って満場の笑いをとった。最年少者だったらしい。県運協役員の重要 な仕事は県選出国会議員、県議会、知事への陳情である。昨年末会長以下役員15名で 県知事公舎に土屋さんをたずね県の国保補助金額を据え置いて下さいと陳情した。県予 算はカットカットの嵐である。知事は分かってます。部長に私から言っておきます。と 答えてくれた。小柄だが精力的で陳情中ワッハッハの連続であった。陳情の後、庭に出 て15名全員とのショットとツ−ショットを撮った。という訳で知事から写真を添えて 署名本が送られてきた。2 月10日の県運協役員会に来賓として出席された花輪県国保課 長の説明によると県国保補助金予算は多少削減されるらしい。精力的な知事といえども 事務方には勝てないということか。因みに議員会館に出向いて行った埼玉県選出国会議 員への陳情は組合健保、政府管掌健保、国保を一本化して下さいという内容であった。

★読書録(22)★

マッチ棒が5、6本入っているマッチ箱を2個用意する。そのうち1個は右手の袖口の 中にしのばせておく。別の1個をテ−ブルの上に置く。周囲の人の目の前でそのマッチ 箱を右手でガチャガチャ振って中にマッチ棒が入っていることを示してから中箱を引い て中のマッチ棒を全部だしてテ−ブルの上に置く。中味は空ですねといって静かに中箱 を閉める。そこでおもむろにマッチ箱を右手で振る。するとガチャガチャ音がする。そ こでまたおもむろにマッチ箱の中箱を引き出すとあたりまえだが何も入っていない。こ んな簡単な仕掛けの手品にエッどうしてと六本木のスナックバ−でバ−テンにすっかり だまされた。だまされたというのは表現がよくない。ひっかかった? 同じだ!ル−ル 違反だがその場で上記にように種明しをしてくれた。

それで病み付きになり手品本を読んで手品の研鑽に励むこととなった。まず学んだこと はその場で種明しをすること、同じ手品をその場で2度演じることは厳しく禁じられて いて、実演の際は1にも2にも口上、演技の演出が最重要であること。松田道弘さんの 「とりっくものがたり」(ちくまぶっくす¥850)、高木重朗著「トリックの心理学 」(講談社現代新書¥520)、泡坂妻夫著「トリック交響曲」(文春文庫¥340) などを読んで基礎知識を仕入れた。池袋駅西口のペンシルビル芳林堂書店の上の方には 手品のネタグッズを売っているがまだ何も買ってない。本でないから!? 実習の教則 本としては松田さんの本があり所有しているが書名をここに書かない。うまいものを出 す店をみつけても、人に言うとお客がワイワイ押し寄せてきて味が落ちるから店名は秘 すと言うグルメ評論家の理屈と同じです。おおげさな!! 実は書名を忘れた。やり方 を懇切丁寧に解説している。解説通りにやろうとするがうまく行かない。手先の器用さ を要求される。不器用な人はどうすればいいかと考えて、今では、マギ−伺郎さん、ナ ポレオンズの実演を4チャンネルの「笑点」を見ながら練習したりしている。フォ−シ ング(forcing)という技法があって、観客は自分の意志で何かを選ぶのだが、 実は....という技法である。これなら手先の器用さは関係ない手品なので、なんと かこなせる。一番ダサイのは1−10の数字のうち一つの数字を強く思ってもらって相 手に言ってもらう。その数字を書いた紙を部屋のどこかから「この数字ですネ」と取り 出す。うちのかみさん....を連発するコロンボ刑事の番組でみた事のある手品であ る。     やはり手品はミュ−ジカルと同じように見て楽しむものであるというこ とを実感している昨今です。

★読書録(23)★


今も時は流れている。年をとるにつれ時の流れが早くなっていると感じている。ミレニ アムの3回めがまわってきた今年はなおさらである。体感時間が年齢を重ねるにつれ早 くなることの説明の一つとしていわれているのは、10才の子供にとって1年は人生の 10分の1、60才の人にとっての1年は人生の60分の1。だから、だんだん時の流 れが早くなるように感じる。私の珍説でいうと、これまで生きてきた年数をx年とすれ ば一年は

1/x年,だんだん早くなる度合いはいわば速度だから、微分すればよい。微分すると

1/xの2乗,つまりだんだんの早さは2乗できいてくる。だんだんというより、だん だんだんだんはやくなってくる!? 異なる生物の間では前に紹介した「ゾウの時間、 ネズメの時間」(中公新書)で述べられているように個体の心臓の鼓動を物指しとして 時間が流れていくとしている。この本によると心臓のドキドキの生涯回数は哺乳動物で はほぼ一定だそうだ。象の心拍はド−−−キ、ド−−−キ、ネズミはドキ、ドキ。いず れも何億回かの同じドキドキ回数で寿命となる。だからネズミは約3年、ゾウは約10 0年の寿命となる。ゾウもネズミもそれぞれ時間はこんなもんだと思っているのだろう 。人間でいうとおそろしい事になる。飲んだくれて心拍数を毎日高めている人はそれだ け寿命を短くしている。そういえば過度の飲酒は緩慢な自殺であると誰かが言っていた 。しかして太陽系の動きをベ−スとした絶対時間があり、これはこれでと−と−と流れ ている。

まえおきが長くなった。時間に関して説明してある本をさがして読みあさっている。ま ず渡辺慧著「時間の歴史−物理学を貫くもの−」(東京図書刊¥900)。著者の渡辺 先生は敗戦後珍説(たしかマルクス主義についての珍説)を中央公論誌上に発表して物 笑いをかった人として有名。敗戦後珍説を唱えたのは他に志賀直哉、桑原武夫(俳句第 二芸術論)がいる。お二人と同じく、先生もその後立ち直って「知識と推測」(末買) 、「パタ−ン認識」(岩波新書、みにくいあひるの子の定理の解説本)など次々と発表 されている。珍説のせいで論壇の主流からはずれて今では忘れ去られている先生ではあ るが、亡くなってから何年もたっているので、岩波書店の「世界」誌あたりで、大々的 なオマ−ジュ特集を組んでもらいたいと思っている。試しにインタ−ネットの検索エン ジンODIN (Open Documentary Information Network)に渡辺慧と入れて検索すると400件以上のサイトが出てくる人 なのである。この本について言えば、書名副題の通り、エントロピ−に至る時間につい ての物理学を体系的に書いている好著である。絶対時間のすべてが絶対に分かる教科書 であろう。もう一冊教科書を挙げれば滝浦静雄著「時間」(岩波新書¥280)。大森 荘蔵先生は反語的な書名の本「時は流れず」(青土社¥1800)を出している。「哲 学・科学の根底にある「時間」概念を根底から覆し、フッサ−ルやウィトゲンシュタイ ンも解けなかった「他我」問題を解消、西洋思想の根幹としての「意識」の虚構性を暴 くことによって、現代科学の隠れた陥穽を突く。」と本の帯に惹句として書かれている 内容をさらにむずかしく語っている。日本の哲学者は大森先生はじめ苦労して読んでみ ればナア−ンダとわかるやさしいことを漢字大盛りの文章で綴るから読者は辟易するの だが、書名につられてつい買ってしまう。

文化(文科?)面から時間について述べている本も何冊か読んだが、それらの書名、内 容は忘れた。時間は時に悪戯もする気まぐれなものです。時の気まぐれについて書いて いる本は武者利光著「ゆらぎの世界」(講談社ブル−バックス¥580)。五月のそよ 風、モ−ツアルトの音楽、ルノア−ルの絵は何故ここちよいのでせうか?それはこうい う訳でせうと武者先生(元東工大教授、今は会社の社長?)はご自身で発見された1/ f理論、つまり時間的に現象がゆらいでいると人間はここちよく感じるのですと述べて いる。今は売ってないかもしれないが、五月のそよ風を再現する扇風機を松下電器が販 売していた。先生の理論による商品だった。

日本経済新聞朝刊の経済教室欄に2000年2月21日から6回連載でソニ−コンピュ −タ−サイエンス研究所の高安秀樹さんが「経済のゆらぎと物理学」を書いている。経 済学にも時間の視点を導入せよと書いている。それも明示的に、解析的に。動的経済学 という学問分野はあるが、時間的なゆらぎについての考察を加味したらどうかと主張さ れている。                                       
★読書録(24)★


本ではないが新聞雑誌に出ている広告も読むものだから、見た、読んだ、どうなった? を書いてみる。読書録のネタ切れが近いからと勘繰る人もあろう。こういう書き方を楽 屋落ちといって忌みきらう人が多いのは承知している。

朝日新聞の3行広告で海外営業サ−ビス幹部候補生を求むというのがあったのは35年 前。今は新聞・雑誌に1/2ペ−ジ、1/4ペ−ジ求人広告を出す位に成長した会社だ が、当時は三行広告。見て読んで応募したら和光工場で筆記試験を受けて下さいと通知 が来た。行ってみると3階の食堂に千人くらい(あるいは2日に分けて各々500人位 ?)の人が来ていた。結局採用されたのは7人。その中の一人に入って幹部にはなれな かったが勤続30年、定年を迎えて今に至っている。

2度目の海外駐在5年間のベルギ−駐在を終わって日本に帰って来たら西武新宿線狭山 市駅(当時の駅名は忘れた)近くの旅館に親子4人と猫1匹、私からいわせれば、押し 込められた。社宅として貸してあった東急入間川団地の我が家にまだ住人がいた(と思 う)からである。その翌朝差し入れの日本経済新聞の広告が目に入った。和光市駅徒歩 5分のシ−アイハイツ第3期分譲。電車を乗り継いで現地に行き説明を聞くと入居は1 年後とのこと。狭山から都心への通勤は物理的にもうムリと考えていた。すぐ入居希望 でしたらいくつかご案内しますという。前回訳ありで売れ残っているのを見せてもらっ て決めたのが現在住んでいる402号室。縁起が悪くて売れ残ったのか?1302号室 の住人にエレベ−タ−で一緒になった時お互い縁起の悪いところに住んでますネと言っ たら、うちも売れ残りを買ったんですと言った。

狭山の家は買った値段の3倍ですぐ売れたが、シ−アイハイツの売主伊藤忠には150 0万円の借金が残っていた。これから20年、毎月の給料と年2回のボ−ナスでコツコ ツ返済しなければならないユ−ウツだなと思っていた時、見たのが駅から1分、1千万 円と1の字が大きく2ツ並んでいた荻窪駅南口駅前のワンル−ムマンションの広告。日 本経済新聞の1/4ペ−ジ広告。5月の連休に現地に行ってみた。お風呂屋さんが廃業 して土地信託でビルを建て細切れにして売り出している。その中で一番大きな30平方 メ−トルのものを住んでいるアパ−トを担保に借金して買った。駅前にあるつたのから んだ家の不動産屋さんに管理を頼んだ。すぐ、今でいうベンチャ−ビジネスの会社が事 務所として借りてくれた。4,5年たったら拙宅に毎日のようにあのワンル−ムを売っ てくれと電話がかかってくるようになり、その中で最も誠実そうな不動産屋の仲介で売 ることにした。買値の2倍強で売れた。不動産取引は現金だと言われて怖くなって借金 先の埼玉銀行(当時)に頼んで池袋東口駅前支店の会議室を手配してもらった。現れた 買い主が風呂敷包みのうん千万円の札束を広げた時は足がふるえた。このお金で今住ん でいるアパ−トの借金がチャラになった。バブル景気のさなかのことである。取引が済 んで池袋駅東口前に来たら宝くじ売り場の前に年末ジャンボ宝くじを買う人々の長い行 列があったことを覚えている。キチンと整理しておいてつもりなのに、ISDN回線を 入れて拙宅の電話番号が変わっているのに今だに荻窪の物件を売りませんかの電話がか かってくる。

最近眼にとまった広告は日経夕刊テレビ欄下の1/4面広告。熱川ライフケアマンショ ン。一生死ぬまでお世話します。うん千万円です。体験宿泊は御1人さま1泊¥8,000. - 。早速申し込んで行ってみた。なるほど広告に書かれた美辞麗句どうり。温泉あり( プ−ル付)、大島の眺めよし。FAQ(インタ−ネットの業界用語。Frequently Asked Questions) ですヨと言われたが現地で2 つの質問をしてみた。1)こんなにひねもすの たりのたりかなの海を床暖房の部屋から見ているとボケが早まるのではないか? 2)伊豆 は地震の名所ではないか? 1)の答え: 東京から電車で2 時間くらいですからボケる暇な く、頻繁に東京に通っている住民の方もおられます。2)の答え: 源頼朝の昔から伊豆半 島はありますヨ。字熱川の属する東伊豆町の作成した危険地域マップを見せてくれた。 確かに地すべり危険地域から充分離れている。それに伊豆地方は頻繁にガス抜き地震が あるので、神戸みたいな事はありません!

たまたま広告を見てアパ−トを買って和光市に住んで16年。それなりに地域社会の皆さ んとの交流の輪もできている。しかしここで死ななければならない理由はない。ついの すみ家に移住して新しい近隣関係をつくるのなら早ければ早い方がよい。買おうか買う まいかと迷っている。

うちの家内は朝日新聞の3 行求人広告を見て応募して結構はげしい競争があったらしい が、ベルギ−大使館に採用された。ベルギ−は知る人ぞ知る何でも有りの国だから50才 前後のアンタでも採用してくれたんだヨと時々彼女に皮肉っているが、勤続10年今年12 月にめでたく定年退職の予定だ。

誇大広告など問題も多いが、上掲例の如く役立つ広告も多い。要は広告を見る人次第。 何でこの広告をこんなふうに出すのか? と考えながら一つ一つの広告をみていると時間 のたつのも忘れる楽しみの一つである。たまには即物的御利益もある。もう一つ重要な 点は、村社会の外に出てみようとする人( たとえば村のよろずや以外で買い物したい人 々)にとってとても役に立つ情報を提供しているのが広告ということであろう。しかも タダで。折り込み広告にはまだ手(目?)がまわらないので、直ちにくず篭行きとなっ ている。 

なぜハタからみていても面白いか? 考えてみればテレビコマ−シャルもそうだが、新 聞・雑誌広告作品はスポンサ−様、広告対象に受け入れられて、つまり効果を出してナ ンボのものだ。作成側はstate-of-artを駆使して人の心を動かして買ってもらう、メッ セ−ジを伝えるはたらきをその場その場で実現させている。この「読書録」のような駄 文集や三文小説などとは訳がちがう。

★読書録(25)★

へんてこりんな書名の「パ−ティ学」(社会思想文庫 法政大学出版局刊)を読むこと を勧められたのは40年位前。川喜田二郎先生、KJ法創始者の本。たまには人に勧め られた本を読む。ワイガヤ発想法の元祖だろう。この本ではまだKJ法と銘うってなく てヒマラヤでの野外調査の記録を綴ったものだが不思議な魅力のある本である。その後 カッパブックス「鳥葬の国」、中公新書「発想法・続発想法」などを次々と発刊され買 って読んだ。

西洋流というか、ああしてこうすりゃこうなると知りつつこうしてこうなった2人とい う久保幸江の歌の文句とちがった、いわば論理前のモヤモヤを整理する方法、そしてそ れにもっともらしく理屈をつけて提示する方法を解説している。勿論西洋でもデカルト などが誰でもできる幾何学を目指して解析幾何学を始めた。モヤモヤ、バクバク、つま りなんだかわからないがうわ−っとわいてくる混沌とした思いあるいは考えを誰でもま とめることができる方法である。川喜田先生はこれをKJ法と名付け、それを広宣する ための団体を設立されて活動された。団体を作るに際してKJ法を特許だか商標登録だ かにされようとして努力された。今でこそコンピュ−タ−プログラムを特許にすること は普通になっていて知的所有権保護が当然のようにいわれているが、当時の日本でこの 事を考えられたのは断然新鮮である。

先生はまだ御存命だと思うが、数年前大著「創造と伝統」(pp390,祥伝社刊\260 0)を出された。発刊当時あまり評判にならなかったように記憶している。この本の内容 を一言で言うのはむずかしい。いい味のゴッタ煮とでも言おうか、自伝、KJ法の宣伝、 批判的西洋文明論、日本のこれから行く道など滔々と述べられている。強いて言うなら ば川喜田学の集大成であろうか。

この先生の本は読んで楽しむといった類の本ではない。かといって単なるハウツウ本で もない( 発想法の題名もあるが)めずらしい本どもである。

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