読物の部屋その8〜3
★読書録 (11)★     ーーー6/20 徳淵 誠 記

ジョ−ク本というのがある。ジョ−ク本は読書録(8)で書いたと同じ効能がある。 読んで笑えれば英語力がそのたびにつくことになる。「5600jokes for all occasions 」 厚さ6cmぐらいの大冊を八重洲ブックセンタ−の洋書バ−ゲンセ−ルで買った 殆どはゴミジョ−クであった。

ジョ−ク本の総本山は私に言わせればベネット サ−フさんだ。ランダムハウスという 名門出版社の社主をつとめながら自分でもいろいろ書いている。欧米ではシンジケ−ト コラムがあって、コラムニストのコラム(今ではア−ト・ブックヴァルドなど)を各新聞に配信 するシステムができている。4コマまんがもある(チックヤングのブロンディ)。もうだいぶ前 だがベネットサ−フさんはこのシンジケ−トコラムに長年書いていた。

題して「Try and Stop Me!」。このコラムを止めさたいならやめさせてみろ。というつもりで 書き続けたのだろう。日本では Japan Timesに掲載されていた。作家・芸能人との交流の 中で拾った面白話のコラムで中にはジョ-クでないのもあったが、心のなごむ話が数多く あった。戸板康二さんが「チョットいい話」を文芸春秋か週刊文春に連載していたが、それ の元祖である。コラムをまとめてか、新作でかで何冊か単行本を出している。

そのうちの一冊の表題は「Shake Well Before Using 」。アメリカのチリソ−スの瓶に書いて ある注意書きをそのままタイトルとしている( 確認しようと思って我が家の550L容量の冷凍 冷蔵庫の中をさがしたがタバスコのびんがみつからなかった)。だから、はずである。 ロンドンの本屋にいくと伝記本のコ−ナ−(ベネットサ−フさんは自伝も書いている。

タイトルがまたすばらしいジョ−クになっていて「At Random 」)と並んでジョ−ク本コ−ナ− がある。アイリッシュジョ−クの本が並んでいる。文庫本4冊をまとめてみどり色の箱に 入れてあるのを買った。各分冊のタイトルもジョ−クになっている凝ったつくりのジョ−ク 本である。

みどり色の4ツ葉のクロ−バ−はアイルランドのシンボルマ−ク。本屋の店員がその箱 を包装紙で包みながら「エア リンガス」(アイルランド航空)では主翼に人をのせる んですヨ・・・」? 渋谷駅から首都高速3号線の下の道を西麻布交差点の方へ向かう と丁度真ん中あたり小田急ビル地下にランプライトというアイリッシュパブがある。毎 年3月のアイルランドの守護神セイント・パトリック デイには在日アイルランド人た ちが集まってお祭さわぎをする。ここのアイリッシュコ−ヒ−はおいしいです。お試し あれ。

代表的アイリッシュ ジョ−クは教会の掲示板に書いてあるもので「日曜日午後2時 からチャリティ−バザ−をいたします。当日雨が降った場合は(前日)土曜日の午後2 時からとします」。イングランドとアイルランド、オランダとベルギ−、フランスとベ ルギ−、フランスとドイツ、フランスとスイスお互いジョ−クを言い合って楽しんでい る。アイルランド同様ネタにされているのがポ−ランド。エロティック ジョ−クの数々 は昔「プレイ ボ−イ」誌で読んだ。単行本では「The Classic Book of Dirty Jokes」。 日本でもバレ話、バレ句がある。お堅い岩波書店から謹厳な国文学者の吉田精一さん が浜田義一郎さんと編著で出されたのは21年前の初版「誹風 柳多留拾遺論講」 (\3,600.-)。バレ句を集めた文字通り珍本でありマン本(失礼!)である。

手品の本を多く出している松田道弘さんの「ジョ−クの楽しみ」(ちくま ぶっくす) も面白い。

★読書録 (12)★


「大前研一通信」約40ペ−ジの月刊ミニコミ誌を講読している。年間講読料は\10,000. 友人から本日恵送された三万人のための情報(月刊)誌「選択」12月号 (約130ペ−ジ)をみると年ぎめ講読料\12,000 とある。これと比べると高い 買い物かもしれない。大前さんがマスコミに月々発表される論文・記事を再収録 したもの。書き下ろし本も数多く出している。「遊び心」(学研出版)から始めよう。 この本によると、かれは東工大からMIT大学院に行きPh.Dを取得し帰国して 日立製作所原子力事業部に数年勤めたあと、経営コンサルタント会社マッキンゼ− 社にトラバ−ユしている。

ここは新入社員を猛烈にしごく会社として有名。欧米系の会社の社員教育のよくある 例である。愚息が去年就職したGMの子会社EDS日本支社もちゃんとやっているので 、彼はフ−フ−言っている。大前さんはMITにいる時にはオ−ケストラ部に所属して いた。ラドクリフ大学だか近所の女子大学と合コン(サ−ト)をやっている最中にオ− ボエを吹いている大前さんの前席でポニ−テ−ルの髪をゆすりながら楽器(名前は忘れ た)を一生懸命演奏していたのが彼の奥さんとなった。オ−ボエの演奏を邪魔されたお 陰で彼女と一緒になれましたと書いている。リラックスして多彩な趣味を披露している 自伝。

彼の本領は「企業参謀」(正・続 プレジデント社)から始まる経営/経済書の数々 に示されている。この本は然るべき学者により英訳されたがその訳文を大前さんが気に 入らず自分で訳し直してアメリカのマグロ−ヒル社から出版されている。その日本語訳 が新潮文庫に入っている「ストラテジック・マインド」。最近作の一つ「変わる世界変 われ日本!」(PHP研究所刊、定価\1429-税)は世界の今の経済状態を概観できる本 である。巻末に彼がメンバ−の一人である民間金融財政臨調からの「金融危機について の緊急提言」全文が収められている。新聞報道によると提言の殆どすべてが日本政府 の政策として採用されている。

悪口を言う人は彼が経営指導した会社は皆その後おかしくなっていると言っているが 、もしそうなら今までこんなんたくさん本を出し続けられないだろう。出す本出す本が 売れているのである。悪口を言う人はさらに続ける。世の中には利口な人は少なく、 バカな人が大多数。車で言えばバカ(失礼!車のことが分からない人々)が買うのが トヨタ車、車のことをよく分かっている人はホンダ車を買う。だから本でも....と。 それはそうかもしれない。が、ボ−ダレス ワ−ルドの考え方を諸著作の中で打ち出した 彼はまったく新しい経済学本を書くと宣言しているくらいだから、バカな人だけを相手 に本を書いているとは思えない。

知らないうちに、アルコ−ルのせいかずい分大前さんに肩入れしてしまった。スイス について書くとも宣言している彼のことだから、それに若いからまだまだ彼の本が出て くるにちがいない。読書の楽しみのタネは保証されているようなものだ。長生きしなく っちゃ。彼の政治活動については触れないことにした。うん億円の私財を投じて東京都 知事選に出馬して落選した顛末を綴った本が出ているが読んでないこともあるので。

★読書録 (13)★


「パンサル」、「クリシン」。1998年11月3日(於東京フォ−ラム)岩波書店 のドル箱の一つである「広辞苑」第5版の出版を記念して「21世紀の日本語を考える 」シンポジュ−ムが開かれた。基調講演は井上ひさしさん。俵まちさん他パネリストも 含めてだれも上記2語に言及しなかったが、私の辞書にはチャンと収まっている。

たしかにクリシンこと栗本慎一郎さんは今衆議院議員として政治の世界に行っている から学者としては忘れられ「パンサル」は広辞苑の改訂版の見出し語にはなれないかも しれないが、彼の書いた「パンツをはいたサル」(光文社 昭和56年初版)が出た当 時は知る人ぞ知る(だけだったが)最新の流行語だった。彼はこの本のまえががきでデ ズモンド・モリスの「裸のサル」に言及しているのは当然として、人間の観察眼のたし かさはすごい。昭和63年の次作「パンツを捨てるサル」も含めて言うと裸のサルは寒 いのでパンツをはいたが、増長してなり振りかまわずパンツを捨てる場合もあると、D NA,ド−パミン、ウイルス、エンドルフィンなどの術語を駆使して面白おかしく書い ている。だからまゆつばものの通俗科学書であり、学問的価値のない本とけなす人が多 いが、NHKだって面白学問シリ−ズを放映している(酒井さんがカワイイ)。

ハンガリ−のユダヤ人学者ポランニ−に私淑している彼は冗談半分本とは別に真面 目本も出している。

「経済人類学」(東洋経済新報社)、「意味と生命」(青士社)。通読するのに骨の 折れる二書である。骨を折るだけの値打ちはあった。人間の営みがなんと興味しんしん であるか、どういう見方があるかを教えてもらった。エコロジ−とエコノミ−は語源的 に同根であると言われているがこれらの本を読んでよく分かった。お金が人間と人間( 編注:夫と妻)との交信の手段として言葉と同じ役割を果たしていることも分かった。 人間と人間の関係からあまたのいわゆる思想が出てきてることも分かった。

この2書の 冗談半分面白本版として彼が書いているのが光文社刊のカッパサイエンス シリ−ズ「 鉄の処女」。清水義範さんの諸作品は電車の中では読めないヨ−と中野翠さんが彼女の サンデ−毎日のコラムで悲鳴をあげていたが、この本も電車の中で読むことは慎んだ方 がよいと実感したので、すぐペ−ジを閉じた。とにかく面白い。<本書の適応症>、< 用法>が本のカバ−に書いてあり<用法>として食前、食間、食後いつでもよいとして あるが「電車の中はダメ」とつけ加えたい。上前淳一郎さんの週刊文春長期連載「読む クスリ」は読んでクスリと笑うにかけたいいコラムタイトルだと思うが、この本は爆笑 させられることがあるから読んでみようと思う方は慎重に場所を選んで下さい。

それにしても、日債銀に注入した公的資金1400億円はどこにいったのでせうネ。 「あの帽子」ならばお母さんに聞けば行方が分かるのですが・・・。税金1400億円 の行方については「ワリシン」いやクリシンさんに聞きたいところです。そういえば日 債銀国有化が政府発表された12月13日(日)10チャンネルテレビ番組「サンデ− プロジェクト」に彼が出ていました。

★読書録 (14)★


入交さんが(社)自動車技術会の役員になるというので、ドド−ツと会社経由で会員 になられた(ならされた?)方も多いと思う。「自動車技術」(月刊誌)はここが発行 している。この会は自動車ハンドブックの製作販売、年2回の自動車技術論文発表会な どを行っている他通産省工業技術院から頼まれて自動車規格の作成も行っている。JI S日本工業規格という。運輸省は自前の規格JASO規格を作らせて出している。

通産省VS.運輸省のバトルの一端が規格作成にも現れている。JIS規格はISOにつな がっている。二輪車は日本が世界生産量の大半を占めるようになったので、二輪車IS O規格は日本が主導して作ってもらいましょうという事になったのは35年前のことで ある。その事務局になったのが自動車技術会。通産省のご指導があって、ISO規格は 英語、仏語、ロシア語で作成するんですヨといわれた。自動車技術会はあわてて二輪業 界の助けを求め、..いろいろあった。かいつまんでいうと、まず最初に作った二輪の ISO規格は後輪ショックアブソ−バ(ダンパ−)の取り付け寸法(目玉間隔?)であった。

最新のISO規格は堂々たる英文400 ペ−ジの代物で、表題は「2輪衝突安全性 測定法」。日本とイギリスの間で2輪の安全性について議論が行われ、決着がつかず、 国際規格ISOで衝突安全性の測定法を作ってもらい、それに基づき決着をつけましょ うということになっている。これではかいつまみすぎてよくわからないと読者諸氏は思 うと思うが、主題と離れるので先を続ける。

「自動車技術」誌には技術解説記事(各社の新車解説を含む)が毎号載っている。自 動車規格作成活動報告も載っている。先の脱線話も正式報告がここに断続的に出ている 。技術解説記事は小生にとっては頭の体操になる。だいぶ前になるがホンダの可変バル ブタイミング機構の解説記事があって図面を見ながら考えた。バルブ駆動カムが2ツあ り、油圧バルブピストンで作動を切り換えるようになっている。このピストンは線だけ みると一体物にも思えるが、3分割されたピストンであることが分かるのに30分かか った。それで思い出した。服部さんがオ−トマチックトランスミッションの発明で先頃 紫綬褒章を授けられた。専門的になるがトルクコンバ−タタ−ビンステ−タトルクを検 出して、変速クラッチ油圧をコントロ−ルするメカニズムの考案に対してである。服部 さんから聞いたところによるとその時、ライバルとなっていたのは東洋工業の山本さん のバンケルエンジンの実用化。決め手となったのは独創性だという。見る人は見ている 。2輪ISO規格作成に初期の頃から参画したので自動車技術会に入会し、購読を始め た思い出の多い「自動車技術」誌だが定年を期に会員をはずれたので、その後は読んで いない。

自動車業界学術誌「自動車技術」とエレクトロニクス業界誌「日経エレクトロニクス 」の(読書録16参照)記事を長年読んで感じることは自動車の方はどろくさい。エレ クトロニクスはスマ−ト。先輩のどなたかがいうように、我々はタイヤを介して地面を はいまわるのですヨ。自動車関係の最新技術のご開帳は自動車技術会論文発表大会で 行われるが、たいしたものは出てこない。各社最新の技術は隠している。或いはボヤカし て発表している。エレクトロニクス関係は「日経エレクトロニクス」誌でみる限りあっ けらかん。こんな物を作りましたア、できましたア!!と無邪気に発表している。下品 なたとえでいうと、モノ(イチモツともいう)が貧弱だと思うと前を覆ってひたすら隠 す。自信があれば堂々と陳列する気になるだろう。飛行機技術から二番煎じのものが多 い自動車技術の宿命なのかもしれない。/E

★読書録 (15)★


今は廃刊となっている研究社の月刊誌「英語研究」の記事の埋草は一コマ漫画であっ た。アラスカが正式にアメリカ合衆国の州になった時の一コマ漫画は喜んだ州民が酒場 に集まって大声で歌っている場面。キャプション(一行コメント)は「Oh! Alaska! where the snow is blowing...」。これはオクラホマ州の州歌となっているミュ−ジカル「オクラホマ!」 の主題曲の歌詞をもじっている。という事を「英語研究」誌に投稿したら採用されて稿料 500円をもらったのは学生時代の楽しい思い出である。原歌詞は 「Oh......! OKLAHOMA, where the wind comes sweeping down the plain ....」。 作詞オスカ−ハマ−シュタインJr.

ミュ−ジカル本は何十回みたかわからない映画「オクラホマ!」の作曲者リチャ−ド ・ロジャ−スの自伝、野口さんの「ミュ−ジカル」(音楽の友社刊)、「マイフェアレディ」の 台本ポケットブック本、その作詞家アラン・J・ラ−ナ−による感動のミュ−ジカル讃歌 「ミュ−ジカル物語」(筑摩書房)の4冊しか読んでいない。冊数からいえば、この拙文 「読書録」シリ−ズでいままで最低。ミュ−ジカルは読むものでなく、見たり聞いたり するものである。

しかして、読書録である。まず、歌詞のテキストは音読すると気持ちがよくなる。メ ロディ−付で口ずさめばもっと気持ちよくなる。頭韻、脚韻が多用されているからであ ろう。日本語の歌詞の典型例(頭韻)は「信州信濃の新そばよりもわたしゃあんたのそ ばがよい」という古風な都々逸ぐらいしか思い浮かばない。ミュ−ジカルの歌詞ではそ れらが連続して出てくる。こたえられない。それにしゃれた表現が続々出てくる。juve nile fancy。NHKテレビの訳詞では少女趣味と出ていた。頭韻例は「Bewitched, bot hered and be- wilderd am I」(パル ジョ−イ)。

リチャ−ド・ロジャ−スの曲はオペレッタの伝統を継ぐものといわれている。甘美で 小粋な曲が多い。自伝によると、作詞家のロレンツ・ハ−トと組んでいたが、彼がアル 中となったので、オスカ−・ハマ−シュタインJr. と組むことになった。そして「オク ラホマ!」、「回転木馬」、「南太平洋」、「王様と私」etc.を発表し続けた。「 王様と私」の中の「シャルウイダンス」は最近日本映画で復活(?)した。「on the c lear understanding that this kind of thing can happen, shall we dance ...」のところは口ずさ むたびにワクワクする。

アラン・J・ラ−ナ−、フレデリック・ロウのコンビは「マイフェアレディ」。原作 はバ−ナ−ド・ショウがギリシャ神話を劇化したピグマリオン。日本では高島忠夫さん と江利チエミさんが帝国劇場(日生?)で初演した。ちょとドロくさかったが、すてき な一晩をすごせたことを覚えている。

海外駐在(出張も含む)中ミュ−ジカルをよく観た。本場のニュ−ヨ−クには行く機 会がなかったので、ロンドンで観た。ジ−ザス・クライスト・ス−パ−スタ−など当時 の新作が多かったが「オクラホマ!」の再演も観た。出ていたのがオ−ストラリア人た ちだったのでオ−ストラリアなまりのアメリカ西部なまりの英語で、珍妙であった。
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これ以上続けると読書録ではなくなってくる。もうヤメロ!の声が聞こえてくる。 オペラ「カルメン」の原曲を活かしながらスト−リ−を現代風にアレンジした映画の「 カルメンジョ−ンズ」のオスカ−ハマ−シュタインJr. の歌詞はお見事!  
終わり!/e

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