読物の部屋その50
★読書録(29)              徳淵 誠 

  スエーデンのアルフレッド・B・ノーベルが
ダイナマイト発明で儲けた金を元手にノーベル賞を設定したのと相前後して1905年 アインシュタインは3つの論文を発表した。相対性理論、ブラウン運動、光電効果。こ の3論文のうちどの論文で彼はノーベル賞をもらったか?相対性理論の論文はノーベル 賞選考委員会のメンバーには理解するのが難しかった。彼らはこの論文に賞を授けて、 後でガセネタと分ったら賞の権威が損なわれると思ったらしく(当時の噂)、無難な「 光電効果」論文に1921年にノーベル物理賞を授けた。なぜ無難かというと、この論 文はより前か同年のにノーベル賞をもらったマックス プランク定数を用いて光電効果 、つまり光は波であるが「光子」という量子(粒子)でもあることを証明したからであ る。
山の師匠の一人があるときボソッとつぶやいた。「今、おれ相対性理論と量子学に凝っ ているのだ」。。その彼はいままでは古典物理学に関心があり、慣性質量と重力質量は なぜ値が同じになるのかと真剣に考えたりしていた。吾妻山系東端の一切経山を歩いた 後の温泉場で私は酒の勢いでそんなの当たり前だろうと叫んで彼の顰蹙をかったが、結 構意味深な問題である事を後で知って恥をかいた。それが急に相対性理論だ量子力学だ とご言い出したのでこちらも競争心がでて関連本を読みだした。「量子のからみあう宇 宙」(アミール、D。アクゼル著早川書房¥2000+税)を読むとアインシュタインが「光 電効果」論文で量子力学の発展に寄与したにも拘らずこの力学思想の根本概念が気に入 らず、もし量子力学が真理と述べているのなら、こんなへんてこりんな論理的帰結が出 てくるという論文を弟子たちと書いた。へんてこりんな結論とは、「同じ過程から生成 した2つの粒子は永遠に結びつけられており(中略)一方の粒子に何かが起こるともう 一方の粒子は宇宙のどこにあろうとも瞬間的に影響を受ける。離れて及ぼし合う不気味 な作用のある現象が出てくる」(P131)。こんな現象は起こるはずが無い。故に量 子力学はマガマガしい。この本によるとこのマガマガしい現象は量子力学の実験で生じ ている事が最近確認されている。いわゆるテレポーテーションは量子レベルでは実際に 生じているのだそうだ。量子力学は厳密な数式の羅列で構成されている。週刊文春読書 欄で立花隆さんい勧められてこの本と同時に買った「量子情報理論入門」(サイエンス 社\1886+税)を読もうとしたが、始めから数式の羅列で2、3頁であきらめた。数式 つまり数学は読書録で書いた如く人間の脳の産物である。そうすると人間が考え ているように量子(つまり究極の粒子)は振る舞っているように見える。となると量子 (電子、原子)のあつまりである我々人間は?!となるとまた自己言及になり堂々めぐ りが始まる(少なくとも私の頭の中では)。ゲーデルの不完全性定理が思い出されたり して千々に乱れる。山田克哉の講談社部rフーバックス「量子力学のからくり」(\1040+ 税)を見ると最後に似たようなことが書いてあり納得?した。へんてこりんだがとにか く数式をいじりましょうと量子力学の研究者は着々と成果を挙げている。例えばジョー ジ ジョンソン著「量子コンピューターとは何か」(早川書房刊(\1899+税)はまだ訳 者あとがきを読んだだけだが、日本の研究者もいたりして将来が楽しみだ。ピンピンコ ロリのピンピンを長くさせるはげみになる。この訳書あとがきによると量子力学とゲー デルの不完全性定理はやはり関係があるらしくロジャー ペンローズの「皇帝芸の新し い心」(みすず書房刊\5974) を読むように勧めている。この本は読書録の中で紹介したような気もするがつんどくだ けでまだ通読してなかった。500頁以上の本なので。

ここから先は妄想になります。読書録(27)などを含めて考えると、物事のからくり はどうもそんな事を考えている人の頭のなかにモヤモヤとあるらしい。凡人はそれにし ても.....とだだモヤモヤと考えるだけである。アインシュタインはデカルト、ニュー トン以来のモヤモヤをすっきりさせた。これがやく100年前。

世紀がかわった今、その後の量子力学、数学、論理学で各人各様にああだこうだと云っ ている。他から見ているとまたもやモヤモヤの再来である。そこで思うのだが、必ずや 近々のうちにこのモヤモヤをスカッとさせる巨人が出て、これはこう、あれはこうと宣 言してくれるだろう。

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