読物の部屋その44
★慶大・月ヶ瀬リハビリセンターの評価      長瀬英一 

実は最近病室を303から313に変わりました。自分の病室でPCを使わせろと要求しましたら、規則違反で明日にでも退院させるかもと脅され、「面白い、このIT時代と謂れて久しいのにPCで強制退院なんて前代未聞!それにテキが慶応病院となれば、相手にとって不足は無い」と向こう見ずに一戦交えるつもりで居ましたが、部屋でコッソリ使える個室に移ることになりました、家族に心労と経済負担を与える結論として・・・。要するに他のリハビリ機関にもPCの使用をOKしている設備がなく、認めた前例も無ければ管理も出来ないと言うのが彼らの言い分。

此処へ入院して約3ヶ月そろそろ様子も解って来たので、この辺で独断と偏見も交えて評価してやろうなんて度外れた野心を起こしました。 そのうち皆 様のご本人か身内の方がご利用の切にはご参考になるかも知れませんから・・・。なにせ自分勝手で我侭な入院患者である事は公認済み?の点もご了解下さい。一部は過去の文章と重なる部分もある事を、ご承知下さるようお願いします。 綜合点約80点の合格。 その詳細を以下に述べます;

《リハビリ部門》
先ず、看板のリハビリはP.T. (Physical Therapy) O.T.(Occupational Therapy) S.T.(Speech Therapy)の3部門に分かれているが、各々若くて研究熱心、職業意識旺盛な男女療法士Therapist達が全国から集まり、肉体及び頭脳を使って献身的に働いているのを見ると気持がいいし、また相当なKnow-Howの積み上げもあるらしく、それなりの実績と効果も出して来たのであろう。機械・器具も豊富で多様。 工作室?の自家特別製もあれば既製品も多い、無論専門業者の手による特注品もある。訓練場・訓練室も外庭や各階に使用目的毎に有り、広さも充分。まだ一人歩きは出来ないが、周囲の景観や環境は悪くないとか・・・。 小生の場合を例に取ると、午前9時よりタップリ1時間P.T.で汗を搾られ、最近では階段を杖付いて三階まで上下したりしています。 

午後13時からはO.T.でマッサージやらゲームで約1時間、それが終わるとS.T.で14:20から20分のInterview。 専ら雑談に終始。 前者2つは2・3人の掛持ちが普通、時には休んだTherapistの担当までをカバーして4・5人の患者が平行処理される事も珍しくないが、ま、致し方ないんでしょうね。自分の左半身不随も幾分動く様になったので95点位は付けたい。P.T.とO.T.は各種の新理論・方式にはかなり敏感で、良いとなれば取り入れる事にも熱心と思われる。 

《電子化・コンピュータ化》
しかしP.Cの.全面的導入・応用には全く無関心・無知・非積極的なのには驚かされます。 S.T.が一番近いが、何処の分野に所属させるか、それとも新組織を必要とするかも知れませんが、 P.C.の効用・恩恵をフルに享受した経験患者にとっては魔化不可思議な現象です。即ち字を書くことは、単に他人と通信出来るのみならず本人の思索を深められる事を可能とします。例え利き手の自由を失っても的確な字を書けるのはPCしか無く、これからの自立に大いに役立つ筈です。 音声認識の方法もあります。 此処を避けては通れないと思うんですが・・・。

一つには良いだろうと解ってはいても費用が膨大になる事から、躊躇し模索最中かも知れません。 慶応義塾大学には伝統ある工学部もあり、必要有れば其処より有形無形の支援も受けられる可能性も有りながら、そんな動きは全くなし。 そして規模が大きく新規に改築された近辺のリハビリ専門病院に患者獲得競争で負け、空きベッドが目立つ傾向であります。 天下の慶応大学付属病院の名前を冠して居ながら、です。 政府予算の切詰めからお粗末な福利厚生行政になって、患者を取捨選択しているのかも知れませんが、云わば経営危機でもある訳で、早急に事なかれ主義や保守的体制の改善が院内で提唱されては居ても、その程度ではどうにもならない現状です。

いまこそ病院の“電子化”を完成させ、他では追従出来ない確固たる地位を得る絶好の好機なのに。 時代の最先端を行く“電子化”病院として再生させ広く喧伝すれば、マスコミも追従するだろうし患者も全国から大いに集って来る可能性も有ろうと思われます。  そんな積極性も工夫も見られないのは残念。 信濃町の慶大病院より中古のComputerを貰い受け、細々と院内の医療事務の簡素化や毎回各人の食事メニュー作成や医師等の連絡にLANシステムを数台の旧式Computerで小規模に実施しているが、治療にはごく短時間の実験に留まっているに過ぎません、それで院内LANの存在を内外にアッピールしています。 慶応だからこそ、そしていまこそ“電子化”は実現可能で着実且つ雄大なプロジェクトたり得ると思いますが・・・! 建物の老朽化にともない新築・改築計画もあるとか聞いているが、まさに絶好の機会と思われる。 他の病院に断然差をつけて、追従不可能にするいいチャンスなのにそんな計画も無ければ気迫もないのは残念である。 この点はマイナス5点。

《医師・看護婦達》
 「病院」を名乗る以上は、医師・看護婦達の存在は欠かせない。 ここも同様、医師・看護婦が中心となって運営されている。 無論患者が居て病院となる。 医師は東京信濃町にある慶應義塾大学付属病院より派遣される場合が多いといわれる。 小生の担当医師は小川と言う年の頃30前後の白面の青年医師、マジメ人間である事は解るが、2ヶ月余りの接触では医師としての力量は未知数。 でも老体のアチコチ入院中に治して置いてやろうとご親切は有難いが考え方や生き方が保守的で、院長と同様に病院管理者としての才能・器量は無いようです。他にも数名の医者がおり、時々各分野の専門医も来訪する模様です。

看護婦及びエイドさんと呼ばれる准看護婦達はこの地域の住人が多いみたく、我侭な老人の多い中を忙しく面倒を見て仕事を消化しています。 最近の不況は例外なくこの地域の雇用状況に良くないらしく、それが反映してか定着率は良いみたい。 此処は突っ放し主義とでも云うか、身障者でも社会復帰を前提に患者を甘やかさないので、時には不親切に見える事も在る。 実際不親切な人も居るが、それは何処の社会でも同じでしょう。 

ナース・コールは何処の病院も申し合わせたように「エリーゼの為に」のオリゴールを使っているが、拡声器越しに廊下に流れるイ短調のメロデーには緊迫感もあり哀愁も帯びていて、病院によく似合う。 自分の小曲が遠い極東の病院各所で今頃このように濫用?されている事を知ったら、きっとウイーン地下に眠るベートーベンも苦笑してるに違いない。 そして小生は、もうこの可愛いい小曲にはウンザリ!
 彼女達は広い廊下や病室を駆けずり回っているが、ローラー・スケートでも利用してやろうと言う、チエ者は一人も居ないのか! 可もない、不可もないで、普通の70点では辛いかな?

《食事》
これまで経験した3つの病院の中で最も良く、食いしん坊を喜ばせています。この辺は食材が安いのか、田舎で人件費が少なくて済むのか知りませんが、オヤ?!と思うメニューと料理が出て驚かされる事もしばしば。 普通、病院の食事とは思えないようなものが食卓を賑わす事もあります。 賄い責任者の顔は知りませんが、料理に愛情と工夫が感じられます。

少しでも体重を軽くしてツラい「リハビリ」もラクしてやろうとの計算?で1,200kclのメニューを自発的に選択していますが、人間なんてホンのチョッピリの食料で済むんだな、と考えさせられます。(普通人は1,500kclと言われてます。) どの皿も小鳥のエサ程度で、ほんのチョッピリ。 日頃如何に無駄な大喰らいをしていたかと反省しきり。 それに何時の事か解りませんが退院後には、必ずやリバウンドして折角70kg以下に落としても直ぐに戻る可能性有りと見ています。 この飽食の時代に辛いですよね、お互い様! いくら喰っても肥らない体質の人も居ますね? 全く羨ましいですよ。 肥って居てヒックリかえったようなもんですからね、私は! 肥る事は万病の元と心得られたし、特に老高年になった折に。 北朝鮮じゃないけれど、減食キャンペーンでもやらなくては!

大分脱線しましたが、日頃の感想も述べて見ました。 此処も昔は酷かったとかですが、前に居た個人病院の「いけだ」も悪くはなかったが、更に良くなって感謝しています。それにしても救急車で選択の余地無く運び込まれた最初の病院・津田沼中央総合病院の食事のまずさは思い出しても吐き気がしますが、カロリーと栄養素があれば良しとする?病人食でした、多分業者と結託された結果だろうと取り沙汰されていました。 ご注意あれ!食べ物の恨みはコワイと言われますゾ。

調理した料理を患者まで成るべく早く届けようとの配慮・設計はしているが、患者数が多すぎるのか何時も冷え切った料理しか並ばない。毎食個人別に献立表がPC.で作表され、間違うこともないし、医師の食事療法が直ちに実行可能なシステムになっています。再加熱可能な電子レンジはない、トースターは患者の自由使用に置かれているが。 採点は大甘の90点.

《掃除》
 清潔が病院のイメージでもあり、重要だが概ね合格点だと思います。何時も綺麗に掃除はされているが、労賃を低く抑える為か目の余り良く見えないないバアさん達に任せているので,こまかいゴミは残っていたりします。ゴミも頻繁に集めてくれます。70点は甘いかな?

《設備》
伊豆半島中央・狩野川沿いでリハビリには最適な環境、都会の喧騒からは遠く離れ空気は清浄で風光明媚、この辺は温泉と猪が名物とか。 季節になれば桜で賑わい、狩野川は鮎釣りで全国に知られた名所。 こう書くと素敵な保養地に聞こえますが、夜は真っ暗、バスが日中1時間当たり1・2本の交通不便な山中の僻地。 そんな田舎に近代的白亜の5階建て殿堂、それが慶大付属病院、月ヶ瀬リハビリセンターです。 何せ築25年とか30年ですから、当時は抜群の新建築病院でも今やすっかり陳腐化して、雨漏りにも悩む現状とか。新規改築?の話もあり、近辺に土地も所有済みとか。 しかし果たして本当なのか、また何時の事やら皆目見当も付きません。 

先ずトイレは狭くて旧式、混み合う時など汚れてきたなく、小便臭い! 患者数に比べてトイレ数が足りないようですが真夜中などは空いていますから、病院などと言うものはムダな投資が必要なところですね?車椅子用が少ない上に最近のWashlet設備したトイレは限定され、小生などは手摺があれば明けっ放しでもOK! 便座に座っていると、見かけるヤツが顔を顰めて通っていきます、こっちは見られても平気ですが、露出趣味でしょうか? 見たいヤツは勝手に見て行け!です、こちとら車椅子ではチョイト厄介なんですよ・・・。 

過去に何度も改造したようですが、もう大改修は限度とか言っています。 電気回路設計が古く電力も不足を来して、常時120ワット前後の電気が必要なWashletさえ増設に苦慮していると言われます。
建物中央に2台在るエレベ-ターのうち1台は後から増設したらしく、ストレッチャーが入る大きなサイズでスピードが遅くて隣の小さい旧式エレベータはコンピューター補整されていず、2台あるは良いけれど、患者・面会者等の恣意で勝手に平行運転しているので、混み合う時など非常に待たされることもあります。

中央エレベーター・ホールに続く長い廊下は車椅子3台は並行出来る広さで80mのウイングが両側にあり、各々8病室が3・4・5階にあって、看護婦たちは駆け回っています。
 これは施設管理の分野かもしれないが、蛍光電球の取替えを頼んだら直ぐ駆け付けてくれたのは良いが、照明器具の掃除までは「担当が違う」と遣ってくれなかった。なに一寸拭うだけで済んだのに・・・。その後に来た掃除のオバさんに頼んだら、脚立がなくて出来ないと言う。院内の照明はすべて蛍光灯で、それも古いタイプばかり。だから色彩はどれも燻すんで見えますが、患者達は多少青白く見えたとしても仕方ないでしょう。 多分日光浴が足りない、と言われそうですね。 少し辛くて60点。

《警備・その他事務など》
田舎だから大して事件も起きそうに無い、警備はかたちばかりで老人が多い。ま、いいっか。全般に縦割り組織らしく、他人の仕事には一切手出ししょうとしない、例え火が付いてる緊急事態でも! とかく前例主義で、何でも他所が動かなければ自らは動こうとしない保守体質。 それは管理の原点にあると思われるから、大いにマケて50点。

長瀬英一 / 静岡県天城湯ヶ島・慶大リハビリセンター 3−313

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