読物の部屋その32
★チリ・パタゴニア旅行記その2     飯田 治

昔、地理でチリーを(駄洒落?)習った頃は、主要産物は硝石に銅、水産物くらいしか出ていなかったように記憶しているが、近頃はワイン、果物それに観光業などが経済活動の上位に顔を出してきている。鮭、もちろん養殖鮭だが、いまやノルウェーを追いぬき世界一位になろうとしているとか…。ワインは安くて旨い。かって私が中南米を徘徊していた頃はフランスに大量に輸出されていたものの、フランスワインの増量用に過ぎなかったのが、いまや独自ブランドで世界に市場を広げている。現に、日本でも千円クラスではチリーものがお勧めである。食用葡萄やキウイも輸出品に顔を出している。工業化は諦めて通商に活路を見出す政策が軌道に乗り出しているようだ。湖水地方に話しをもどそう。

プエルトヴァラスのホテルの道を挟んで隣にはカジノがある。大型バスで繰りこんでくるのはチリーの人が殆どのようだ。湖と反対方向に4ブロックほど歩くと、商店街が途切れてゆるやかな登りになる。その手前に小さな市場があり、二階がレストランになっている。丁度坂道に出入り口が開いている。階下の魚屋の連想で、その食堂と表現したほうがぴったりの店に入った。がらがらなのも午後7時前では当然なのだろう。顔が大きく横幅もたっぷりのおばさんが主人で、似た体型のお姉さんが注文を聞きにきた。

おすすめは勿論海産物。「サンチャゴでは時期が終わった」といわれがっかりした「うに―スペイン語ではエリソ」もあるという。しめた、とばかり、うには1.5人前宛を頼み、さらにサラダ、貝の蒸し物、鮭の塩焼き、キングクラブのバター風味、と海の幸をならべて、ワインで流し込むように食べた。持参のわさびチューブとさしみ醤油が効を奏して、うにの味はまさに絶品。どんぶり一杯をあっという間に平らげた。新鮮な海の香りが快く鼻腔を刺激し食欲をそそる。あわびの蒸し物も沢山出てきた。これぞ、チリーだ!。値段は〆て一人あたり15ドル見当…。ここも都会は田舎がいいぞ、と勇み立ち同じ店に連夜訪れることになった。何時の間にか店は一杯。常連の地元のお客のほかに、ドイツあたりからの観光客の団体がにぎやかに食事を楽しんでいた。うにとあわび、季節を選べばチリー旅行の目玉のひとつですぞ。わさびと醤油をおわすれなく。

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