読物の部屋その24
★野菜づくり事始め記★ーーーーー大沢 敏夫

<なぜ、野菜づくり!>
ホンダを今年1月に定年退職し、この与えられた残り少ない貴重な第三の人生の柱(生活時間の最大を費やし、生きがいを見出すもの)を何とするか。 私は、躊躇することなく“野菜づくり”と決めた。
20年前に始めた早朝ランニング、数年前に始めた(日本百名山)登山、この二つに共通し、今でも 私をひきつけているのが、自然の中の“気(心にリフレッシュ感を与えるもの)”を体で感じ取れること である。四季折々に咲く道端の草花、高山の短い夏に懸命に咲く花々をみると生命力の強さを感じると共に心が洗われる。  

<リストラにあったのね!>
3月に入ると植付け作業が始まる。 家から50m行くと畑であり、付近の賃貸し農園の空き地を探していると、小畔川沿いの竹林を賃 貸し農園にしようとしているところがあった。 家から200m弱と近い。 グッドタイミングとすぐに2区画(20坪)を借りる。 1区画33uで年2500円と安い。(注:鶴ケ島市市民農園は30uで12000円)  

一方、野菜づくりの知識を求めて日高市立図書館・鶴ケ島市図書館・川越市図書館へ行き、野菜 づくりの本を借り、パソコンに入力。 データベースづくりを進める。(注:本別・野菜別・病虫害/肥料など項目別に ファイルを作り、データを入れ込み蓄積して行く) この4ケ月で34冊の本をデータとして入れ込んだ。

午前中の2〜3時間はデータベース作り、午後の2〜3時間は畑で実作業を行う。 この賃貸し農園が安い理由が土地を掘ってみてわかる。 地面下20cmと30cm付近に粘土層がある、この粘土層は粘りがあり、“カツヲブシ”のように削り取 らないと細かくすることが出来ない。 それとこの土地は土砂の捨て場になっていたらしく、コンクリの破片が多い。

チャントした畑にするためには開墾作業が必要とわかる。 33uの土地を40cmの深さに掘り起こし、粘土層を削いで細かい土にかえるのに1ケ月を要すこと がわかる。 根気と体力がいる仕事であるが、山登りの登りの心境・ウサギとカメのカメさんの心境で毎日時間 を決めてとりかかる。 1ケ月たつと周りの土地を借りた人達はこの重労働の掘り起こし作業を行うことをあきらめはじめ る。 最初は安いのでわれ先に土地を借りた人が、土地を返却し始める。 私の借りた土地の隣接地も借り手がいないままになっているので、土地の借り増しを順次行う。

現在私の借地は6区画(200u)にまで拡大した。 この畑は日高団地の犬の散歩のメインストリートに面している。 早朝から暗くなるまで100人を超える人達(ほとんどが奥さん)が犬の散歩で通りかかる。 「いつも畑を掘っているあの人はリストラにあったのね!」という噂がたっていると近所の奥さんが 知らせてくれる。 いつも若く見られるから、40代位に若く見られたのかなと思う。 確かに、毎日毎日下を向いて苦しさに耐えて土を掘っている姿は落ち込んでいる暗い表情に見えるのかも知れない。

<野菜づくりには“戦略”が不可欠!>  
野菜づくりを始めるにあたり、Must要件を2つ設定した。
Must要件1:つくった作物は全て食べる、捨てない。
(私は、夫婦2人の生活であり、近所への若 干のお裾分けを含めて食べられる量のみをつくる。ムダなことをしない心を大切にしたい。)  
Must要件2:農薬など化学薬品を使わない。
(自分の体への影響も含めて、地域環境保護の観点 から設定。)  
たったこの2項目のみかと言われそうだが、よほど戦略的に進めないと達成が難しい事と考えている。

野菜の性質の特徴的なものとして、連作障害がある。 例えば、ナス科に属するものとして、トマト・ナス・ピーマン・ジャガイモがあるが、4〜5年先まで仲 間同士でも同じ場所でつくることはできない。 これらの性質を勘案して、私は畑を36の畝に分割し管理することにした。 グローバルスタンダードの考えを取り入れて、1つの畝の巾は1m、長さは3.5mとした。 そうすれば、今後導入するポリマルチ・寒冷紗・防鳥ネットなどの最新兵器?を全ての畝で転用可 能となる。 畝の長さを3.5mとしたのは、夫婦2人で食べられるのはトマト・ナス・キュウリで、各6本が限界で あり、3.5mあれば十分と判断した。(1本で30〜50ケの実がなり、計200〜300ケ食べれば十分。)  

<野菜づくりは“生物戦争”だ、緒戦で敵のパワーのすごさをしる!>  
3月末、掘り起こし作業の終わった畝から順次野菜を植えていく。
ジャガイモ・ホウレンソウ・ネギ・サニーレタス・キャベツ・・・などなどこれまでに24種の野菜を植えた。 これまでに収穫したものは、ホウレンソウ・サニーレタス・キャベツ・キュウリ・ナス・トマト・シソ・ピ ーマン・モロヘイヤなどである。  

収穫したものの中から、キャベツを事例にとり生物戦争の実態を紹介する。
4月3日鶴ケ島農協でキャベツの苗5本を350円で購入し畑へ植え付ける。ヒョロヒョロとしたか細い苗で、春の強風が吹くと茎が折れるのではと心配する。 5月連休あたりからグングンと葉が大きくなり勢いがついてくる。 玉を巻きはじめる5月中頃から毎朝キャベツについたアオムシ(モンシロチョウの幼虫)を取るのが 日課となる。  6月に入ると中央部の玉が大きくなる、アオムシは中央の玉の部分を中心に葉をかじっている。  アオムシは毎朝・夕方に取り、計70〜80匹は取った。  しかし、6月10日頃になるとキャベツの葉の部分が次々と虫に食われ葉の血管に相当する脈の部 分のみ残すだけとなる。  

6月11日キャベツを収穫する。 驚いたことに玉の中央部に根から侵入している大きな虫が数匹でてくる。 この虫はヨトウムシといい、体長は30〜40mm、胴回りが15mmの大きさ、夜中に行動を起して葉を 食べ、土の中から玉に侵入し玉の内部も食べる。 まさに、忍者のような虫である。 夜中に懐中電灯を持って毎日畑へ行き、虫取りは出来ない。 結果として、このキャベツはほとんど虫に食われ私の食したのはほんの1部分だけだった。 来年はこの虫対策をやるつもりだ。  

野菜づくりの敵は虫以外に、カビやバクテリアなどの微生物、カラスなどの鳥、それと“雑草魂”をも ったしぶとい雑草などがある。 人の場合は“病は気から”というが、野菜の場合は“病は土から”といえる。  
野菜づくり相手は、生物戦争に勝ち残った最強精鋭部隊、一方、こちらの野菜部隊の主力は、純 粋培養・温室育ちの弱小部隊が主力である。 ファイトをかきたててくれる。 生物戦争の戦略上の最重要事項は“土づくり” と考え、これから取り組んで行く。    
野菜づくりのステップアップした次の目標は上記の基本戦略・戦術が確立したあとに考えたい。

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