読物の部屋その11
★白い夜★          1999年2月26日(吉岡伴明記)  

 「何か生温かい感じの夜だな、今日は飲むのを少し控えれば良かった」
と男は半分呟きながら夜道を歩いていた、郊外の駅を降りてから15分程の距離だか 住宅地へ向かう道はもう12時を過ぎると人通りはまったく無くまばらな街燈が寂しく灯っているだけだった、男はあれこれ考えながらコートの襟をすこし緩めてふらついた足を運んでいた。  

 なにかちらっと目の前をかすめていった、
「おや雪かな?こんなに暖かいのに、それとも飲んでいるせいかな?」
顔を上げると白いものがかなり落ちてくるのが見えた、
「なんだ天気予報はそんな事言っていなかったのに」
とぼやきながら辺りを見まわした、右側の林は真っ暗で何も見えなかった、反対側は畑らしく何かの野菜が青黒く見えた。  

 白い雪は次第に多く降り始めた、なぜか自分の周りにだけ多く降っているように見えるのは夜目のせいだと納得しながら足を進めた、なぜかぜんぜん寒くなかった、寒いと言うより逆に暖かい感じがした、気分は何かウキウキしてきた、口笛でも 吹きたくなってきた。  

 相変わらず空からは白いものが落ちてきて来ていた、周りも少し白くなってきたように見えた、男の頭にも襟元にも積もる感触があった、気分は更になんとも言えない楽しい気分になってきた体が火照ってくるのを感じ、なぜかコートを むしょうに脱ぎたくなった。もうたまらなかった、ついにコートを脱いで腕に抱えた、 まだからだの火照りは収まらなかったと言うより何か夢を見ている様な気持ちになった、 男は更に上着も取って襟を緩めた、それは更に強く頭や襟に降り注いだ来た。

 もう何も考えたくなかった、どうでも良い気持ちになった、男は道端に腰をかがめて座り込んでしまった、まるで夢を見ているような、又天にも昇るような 気持ちになっていた。
「あ〜最高だ」
男は叫ぶとそこでとうとう着ている物を殆ど脱いでしまい寝そべってしまった、 彼の体は完全に白い色で覆われてしまった。

「第一波降下完了!、第二波続いて降下中」
「大丈夫だ行けそうだ!全面作戦に入れ!」 
「判りました!全面作戦に入ります!」 「第二船団,第三船団へ、全面作戦を展開せよ!」
宇宙船の中は更にあわただしくなった、皆は右往左往とあわただしく動きながら各自の持ち場に向かい機械の操作を急いだ。  

 男は完全に夢を見ているような気持ちだった、もう最高の気分だったもうどうでも良かった何でもしてくれという気だるい感じとなった、男の上に積もった白い雪はすこし赤く変わって人の形をかたどっていた。

「司令官!侵入は成功しました、この国の生き物は非常に巨大です、頂上には太い柔らかな黒い林があります、そしてその下は厚いプロテクターに覆われていましたが生き物の意識をコントロールして剥がすことに何とか成功しました、しかし意識細胞のコントロールは簡単でした、体内侵入と食料の生態状態保存化に成功しました」

成功だ!船内はにわかに色めきだった、
「急げ!!この作戦は気づかれずにやらないと完全に成功しない!」
司令官の声に厚い雲の形と見間違う様な幾つもの宇宙船から続々と、、、

白いものは更に激しく降ってきた、氣が付くと道のあちこちに人の形をした赤い固まりがほらそこにも、、。
―― 完――

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